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1998/2/28
フィル・ミントン&豊住芳三郎

朝日新聞1998.3.18朝刊より

 

祥子の地酒巡り5
蔵元が消費者にPR

お酒を賢うなら、酒屋、コンビニエンスストア、スーパ、それともディスカウントストア?−最近、酒を扱う店の免許制度が緩和され、消費者の選択肢は増える一方で、製造者である近江の蔵元、流通業界にも大きな変化が起きている。

まず蔵元間の意識が変わってきた。競い合うライバルであるのはもちろんだが、仲間意識も生まれてきた。県内には税務署管轄で七つの酒造組合があるが、イベントを重ねるごとに逢うエリアの酒屋との交流が深まった。ウイスキーやワインに押され気味で日本酒市場の厳しさが増す中、昨秋、半界で初めて東京・銀座でも販売促進フェアを開いた。力を合わせて「滋賀の地酒」を売り出していこうという機運が次第に高まってきている。

こうした動きに地元の卸売業者も応じた。

洒類・食品の総合即売会社滋賀酒販(本社・大津市)は、京都、滋賀でコンピニエンスストア「セイコーマート」を展開中。加盟店七十店は元酒飯店ばかり。大型ディスカウントストアの進出に対抗し、「酒に強いコンビニ」を打ち出しているが、県内の蔵元とのタイアップにも取り組む。

大林一郎社長(47)は、近江路酒蔵元の会で統一銘柄酒を売り出すと決まったとき、四合瓶を提案した?一升瓶は贈答品向け。一般家庭の消祭者を増やすためには、冷蔵庫で冷やして保存でき、そのままテーブルに出せる大きさであることが必要だと思った」と話す。「大手メーカーが独自にもつマーケティング、商品開発部門の役割をわが社が果たせれば」

蔵元側も独自に消費者へのアピール、コンタクトに力を入れ始めた。吉田酒造(高島郡マキノ町)の専務吉田肇さん(37)は、県酒造組合連合会の需要開発員長。滋賀の地酒を紹介するイベントを三年前から手掛けている。

「これまで我々蔵元と消費者には接点があまりなかった」と吉田さん。最初は一対一の対応に慣れなかったせいか緊張することもあったが、「自分たちの酒の評価を直接聞くことができ、手ごたえを感じられるようになった」と話す。

また、同酒造では二、三年前から、新しく売り出す酒にアンケートはがきをつけている。「マンガや雑誌にも読者アンケートがある。ドラマの影響で関心が高まっているのか、質問もたくさんくる。読んでいると、楽しくて勇気づけられる」。返ってきたはがきは、そのまま顧客リストになるので、新しい取引も広がっていく。

明治の酒蔵を六年前、多目的スペースに改装した西勝酒造(近江八幡市)。「酒游舘」と名付け、ライブや展示ギャラリーで人気を集めている。

コンサートを企画するのは専務西村明さん(37)。西村さん自身も、学生時代からロックバンドで活動を続けている。最初は必要だったミュージシャンとの出演交渉も、最近ではツアー途中にふらりと立ち寄ってライブを開いてくれることもある。二月末には「英国祭98」の一環として、イギリス・ロンドン在住のフリージャズ・ミュージシャン、フィル・ミントンが来日公演。ドラムとのセッションの感想を聞いてみたところ、「パーフェクト(完ペきだ)!」。高い天井に抜けた音が、木造の蔵の中に優しく響き、とてもマイルドになるそうだ。

コンサートでは地酒飲み放題。「いろいろなジャンルの人が集まり、音楽と酒で楽しく酔える場にしていきたい。そして人の輪につながっていけば・・・…」と西村さん。「ここだけの味、それが地酒。受け売りですが、ナンバーワンではなくて、オンリーワンの存在を目指したい」と夢を語る。

大地と水から出発して、農家、酒屋の蔵元、杜氏(とうじ)、蔵人、そして多くの人の手を通して、わたしたちに届けられる近江の酒。この一滴に込められた気持ちに思いをはせると、味わいもいっそう深みを増していくのでは。
(青山 祥子)
朝日新聞1998.3.18朝刊

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